病気になってもいっぱい遊びたい

私達は、病院で子どもと遊ぶボランティアです。退院してからも出会いの場を大切にしています。

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「にこにこトマト」20周年の会」に行ってきました

2015年10月31日(土曜) 100人の立食パーティー、懐かしい方々と乾杯!
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京都大学医学部付属病院の小児病棟の「にこにこトマト」というボランティアの団体があります。今年20周年を迎え、10月31日(日)に20周年記念行事が開催されました。20年というと、生まれた子どもが二十歳になる年月です。「ガラガラドン」は1991年生まれで、来年25歳になるので、「にこにこトマト」とは4つ違いの妹みたいな存在です。 「にこにこトマト」は代表の神田美子さんがお嬢さんの入院をきっかけに、活動を始められました。 病院らしからぬイベント盛りだくさんの行事は、夏祭り、ハロイン、バザー、そのほか、音楽活動や絵画など週に4日ほど盛りだくさんのイベントが開催され、社会にあるものをどんどん病院に取り込んでいます。 この日はハロウィンの日でした。入口の白い壁はオレンジと黒にそまっていて、さっそくこどもワールド「にこにこトマト」にようこそという感じで歓迎ムードです。受付の名札は美しい墨の筆文字で手作りの切り絵が施されてたり、プログラムもあけてびっくり玉手箱。売店はシャツやグッズ、手作り品が並び、私の本も売って下さっていました。プログラムは主に3部構成で、①講演、②パーティ、③余興とあり、この中で一番の楽しみは①講演です。ぜったいに聞き逃せないと、東京6時半発の新幹線に乗ってかけつけました。 ご講演はサングラスに背広の小寺洋一さん小寺さんの話を直接聞けるってとてもラッキーなこと。小寺さんは20年ほど前になりますが、大学3年生のときに失明され、その後、点字や歩行訓練を受けて一人暮しを始められた方です。当時21歳という若さでした。真っ暗闇のどん底に落ちて、なげいている暇はない、生きていくため今何をすべきかを次々考え、向上していく姿が毎回の「にこトマ」通信に綴られていました。「ウサギと亀の話、本当にあるんですよ、努力していると追い抜いちゃうってことが」って。努力の積み重ねは奇跡を起こして一発逆転ではないけれど、最後はやっぱり奇跡を見るようでした。 彼は失明から3年たって一人旅に挑戦していますが、その行先がニュージーランドで3か月のバックパッカー。英語が堪能なのかと思ったら、3か月前に始めたとかで、この英語で通じるか?程度で行っちゃう度胸はあっぱれ。その話はご著書「白い杖の一人旅」に譲りますが、さらにその後大学に挑戦し、心理学を学ばれ、今はカウンセラーとして、あるいは京都府視覚障害者協会の理事として活躍されてます。 小寺さんの話は「私も同じ」と思わせるところがうまいんです!1時間の講演の中で印象に残った言葉のひとつに「手助けしてもらうことで、相手にもプラスになる」って。失明してから人の手を借りないと先に進めなかった小寺さんは、「すみません、ありがとう」と何度も繰り返すことに嫌気がさしながら、ある時、自分のすみませんは「相手にもプラスになっている」ことに気づかれます。 私たちガラガラドンにも、そういうことってよくあること。子どものベッドサイドに遊びに行くと、「スミマセン、昨日から病室出る時間なかったので、ちょっとパン買ってきていいですか?」、「どうぞ、ごゆっくり。コーヒーも飲んできてくださいね」、「ありがとうございます。助かりました」。ボランティアたちも役にたてた喜びを得られ、たくさんのプラスをもらって帰っていきます。もう1つ、小寺さんは「重大なことを(失明して)失ったが、かわりに他の重大なことを手に入れた」という表現をなさってました。体験者から出た言葉だけに説得力があります。私も8歳で孤児になって、カトリック系の児童養護施設で育ちました。重大なこと(親)を失ったかわりに重大なこと(他者の支援と無償の愛)を手に入れたと実感しています。あるいは、会場にはお子さんが難病で入院されたり、亡くされたり、筆舌に尽くしがたい経験から「重大なことを失った」方もいらっしゃいます。しかし一方で「他の重大なことを手にいれた」であろう会場の皆さんの共感が、終了時の割れんばかりの拍手に感じました。 ②の立食パーティでは、100人もの人がいました。「高谷さん、ラインやってる?アドレス教えて」「坂上さん、スマホ?」「え~負けてられない、ガラ系から変えようかな(しぶたね)」「ショップの買い物も行こう」「小寺さんにサインもらわないと」なんて、食べながら、しゃべりながら、名刺交換しながら、新しい友達も出来ました。 ③余興は「にこトマ」プレイルームの実演版。お馴染み、たっきゅうさんの大道芸、手を変え品を変えてのマジックと話術に腹を抱えて笑い転げるひと時がありました。最後にゆうこさんの登場。ソプラノの美しい声でアヴェマリアが流れると、隣からも、後ろからもむせび泣きが―。「にこトマ」ワールドのほんの一端を体験させて頂きました。 会場入り口には、にこトマの写真展があり、日ごろの活動の風景が見られます。でも、最初からこうではなかったのです。病院というところは、命ぎりぎりに向き合う子どもがいて、親も疲労困憊しています。感染、プライバシーに配慮し、こども中心の遊びの活動を展開していくことは簡単なことではありません。病院も最初の頃は固かったでしょう、冷たかったでしょう。しかし、20年がたちりっぱな遊びのボランティアの花が咲きました。同じ活動の道を歩んできた者として大変うれしい存在です。「にこにこトマト」20周年おめでとうございます。 国立国際医療研究センター小児病棟 ガラガラドン代表 坂上和子  全国小児病棟「遊びのボランティア」ネットワーク 共同代表 写真展「みてみて」「どれどれ」
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代表の神田美子さん(中央) 坂上(左) 林三枝さん(右・ハートリンク)
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名札は筆文字 シールや切り絵で愛嬌たっぷり
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