病気になってもいっぱい遊びたい

私達は、病院で子どもと遊ぶボランティアです。退院してからも出会いの場を大切にしています。

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“ヘレン&ダグラス ハウス”講演会を聞いて

5月21日(木)聖路加看護大学で“ヘレン&ダグラス ハウス”という子どものホスピスの話を聞いてきました。世界初の子どもホスピス「ヘレンハウス」は1982年誕生。27年前も前のことです。(ダグラスハウスは2004年に併設)。「重い難病であっても家庭的な環境の中でケアを提供することは子どもに対する社会の義務である」。

 現在イギリスでは40くらいの子どもホスピスがあるそうです。日本の国の面積の6割程度の小さな国で、人口も半分。そんな小さな国に40も子どものためのホスピスがあるなんてびっくり!!時代が求めているんだと思いました。

この講演では、ホスピス創設者の動機や運営に関わるスタッフや親たち、そういう方々と対面し生の声を聞けました。講堂400席は満席でした。

 余命が限られた子どもの最善のケアとは?疲れ切った親に食事を提供し、そこには仲間がいて、子供に遊び相手がいて、友達がいる。癒されたら元気を回復してまた家に帰ることができる。死ぬ場所ではなくて元気をもらえる子どもの城みたい。イギリスにはこのような支援の施設が40もあります。子どもが、「またあそこに行きたい」「帰りたくないよ」と言わせる、温かいもうひとつの家が、ヘレンダグラスハウスです。

親が子どもを看取らなければならない場合の助けとはどのようなものか?疲労困憊している親にはくつろげる部屋や食事が与えられます。同じ境遇の人と出会って話ができます。施設内は車椅子が行き来できる広い廊下、プレイルームやゲームセンターにはたくさんの楽しみがあり友達ボランティアもいます。手入れの行き届いた庭、ジャグジー風呂、牧師やセラピスト、多様な人がいて、大きな家族といった感じが映像から伝わってきました。利用は無料。子どもに嘘は言わない方針で「あなたの時間は短いかもしれないが、いろいろやることが出来る」といい、楽しんだり、人生をその人らしく生きることを助け、友情をとても大切にしています。子どもと死別した親に寄り添う悲嘆のケアも行われています。

私がもっとも驚いたのはこのホスピスが病院に付属した緩和ケアという発想ではなく、社会の中、つまり地域の中にあったことです。運営はプロの経営者が関わり、本や服やおもちゃなどいくつかのリサイクルショップの運営はボランティアが担当します。ヘレンハウスは15歳未満の子ども8床、ダグラスハウスは16歳から35歳対象7床。併せてたった15床にいったい何人の人が働いているかといえば8人の理事、16人の常勤、200人近いパートスタッフ、そして500人のボランティアたちです。すごいですね!!

これほど徹底したケアがあって、はじめて「子どもに告知をする」とか、病気の子どもの終末期を支えると言えるんだと思いました。イギリスは第二次世界大戦中にベバリッジ報告を出して世界の社会保障を変えました。ヤングハズバンド報告でソーシャルワーカーを病院に置いたのもこの国です。慈善を個人の善意に終わらせず、国の制度にしたり社会化し世界の福祉を変えてきたイギリス、今子どもの医療環境を変えています。社会は重い病気を抱える患者家族に何ができるか?宿題をたくさんもらって帰ってきました。(坂)