病気になってもいっぱい遊びたい

私達は、病院で子どもと遊ぶボランティアです。退院してからも出会いの場を大切にしています。

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2歳の坊やからもらったご褒美

2013年10月5日(土) ガラガラドン  

活動メンバー10人 (坂上コーディネーター・木村リーダー・さとう・かく・たのう・さいとうま・おかべの・さとうち・いとう・のざわ

集合と解散13:30~16:30 

遊びの時間:14:00~15:30

今日は2歳の坊やと遊びました。この坊やはベッドにちょこんと座って、「ママ~」と呼んで泣いていました。看護師さんのお話では、今日入院したばかりで、しかも、お引越しの当日だとか。他にも兄弟がいて、ママは付き添えないのだそうです。

看護師さんが、「抱っこしても泣き止まないし、今日は遊べないと思いますよ」と言われました。この坊やのお部屋は3人部屋なので、ひとりぼっちではないけれど、それでもベッドに一人で泣かせておくわけにもいかず、おもちゃと布絵本とアンパンマンの人形を持ってベッドサイドにいきました。でも、私が声をかけるとますます泣きがひどくなり、ついには「ママー!!」と大絶叫。棟中に響き渡るほどの大きな声で泣き始めました。歌を歌っても、絵本を読んでも、私の声がかき消されるほどの大音量。抱っこをするとずっしり重たい(看護師さんによると14キロ)。抱っこをされたまま、なぜかベッド脇の壁の扉に何度も手をかけて開けようと身をよじります。扉の中には坊やのお洋服と靴が置いてありました。

「靴を履いておうちに帰りたかったのね」と切なくなりました。

「佐藤さん、大丈夫?」とコーディネーターの坂上さんがみえました。「今日入院したばかりでママがいないなら、あやしてもダメでしょう。泣きたいだけ泣かしてあげて。遊べなくていいから、そばにいてあげるだけでいいから」と声をかけて下さいました。それで私も少し気持ちが楽になりました。そして約1時間、立って歌をうたったり、腰が痛くなると、ときどき椅子に座ったりしながら泣き止まない坊やをひたすら抱っこし、あやし続けました。再びまた坂上さんがみえて、「1度ベッドに下ろしてあげて。その方が落ち着くこともあるのよ」といわれ、ベッドに戻して、ベッド柵を上げました。すると、びっくり。突然ピタッと泣きやみました。そしてベッドで仁王立ちになったままで私たちを見ています。「あれ?あんなに泣いていたのに?」嵐が去った後というか、憑き物が落ちたみたいというか…。坂上さんが「この坊やは保育園に通っていたのかもね。お母さんがいないことには慣れていて、でも突然環境が変わっちゃってパニックになったのかもしれないわ。」と言いながら、坊やに「いい子ね、がんばっているね」と声をかけました。あんなに泣いていた子がぴたりと泣きやんだので、同室で遊んでいた子もボランティアもびっくりしていました。そしてこの日のリーダー(ボランティアの働きを助ける人)木村君もびっくり。みんな目を丸くして見ていました。坂上さんが坊やのベッドにおもちゃの電車がひとつ置いてあるのをみて、木村君に「電車のおもちゃと車、乗り物系のおもちゃをたくさんもってきて」と言い、木村君が抱えてきたおもちゃをみると、目がきらっとしました。それを坂上さんがベッドに並べて見せると仁王立ちの姿勢を解いて、座りこみ、車を手にもちました。そして「くるま」、「でんしゃ」とおしゃべりをはじめました。その様子を見て坂上さんが木村君に「車を走らせるレールも持ってきて」と言いました。レールがベッド上に敷かれる、坊やは、レールの上に車をたくさん並べ、走らせました。坂上さんが電車を指して「これ、きゅうきゅうしゃ?」と言うと「でんしゃ、おおえどせん」といって、「違うよ」ということを大人に教えてくれました。表情も明るくなり、救急車のことを「ピーポー」と言ったり、おしゃべりも聞かれるようになりました。それでも時々しゃくり上げていたので、我慢はしていたのでしょう。坊やの変身におどろきながら、一方で内心不安になりました。こんなに喜んで遊んだら、今度はお片付けが大変だろうなと思いました。ところが意外や意外、30分ほど遊んだころ「お片付けしていい?」と聞くとあっさり「お片付け、いいよ。」と言ってくれました。その時、「ママ来る?」と私に聞いたので、おもちゃを片付けたらママが来ると思ったのかもしれません。最後に坂上さんが、「遊んでくれたおばちゃんにありがとうって言えるかな?」と言うと、ちゃんと座って、私に「あーと」とちょこんとお辞儀までしてくれました。

可愛いしぐさに胸がいっぱいになって私のほうが泣きそうになりました。

最後は「バイバイ」と小さな手を振って穏やかに送り出してくれました。2歳の子どもから大きなご褒美をもらいました。とても幸せな気持ちにさせてもらいました。

こうしてボランティアも子ども達に育ててもらうんだなあと感じる貴重な体験でした。

{%表情ニコニコdeka%}佐藤みどり(ガラガラドン活動歴3年・ アロマセラピスト・13歳男子の母)

{%拍手webry%}佐藤さん、汗びっしょりの奮闘。お疲れ様。坊やが後半、泣きやんでくれたのは佐藤さんに1時間、しっかり抱きとめてもらったからでしょう。ガラガラドンの活動は毎週土曜の午後。両親祖父母にお目にかかれることもありますが、中にはひとりぼっちでいる子も少なくありません。遊びのボランティアはこうした子どもを最優先にします。共働き、一人親、きょうだいの世話などで、付き添いたくても付き添えない親もいます。それぞれに手のかかる子どもにはマンツーマンの手が必要で、医療スタッフと一緒に市民の協力、すなわちボランティアの力が欠かせません。遊びのボランティアは小児病棟のQOL向上に重要な役割を担っています。

NPO法人病気の子ども支援ネットボランティアコーディネーター

(保育士・社会福祉士) 坂上和子