病気になってもいっぱい遊びたい

私達は、病院で子どもと遊ぶボランティアです。退院してからも出会いの場を大切にしています。

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20周年記念フォーラム 親の声2

《病気になっても人生を前向きに歩んで行ってくれることを望んで》

Iと申します。私もYさんと一緒で、国立国際医療研究センターでお世話になっていました。娘の闘病について少しお話させていただきたいと思います。娘は3年生の5月に入院しました。4ヶ月間入院生活を送りました。慢性腎臓病です。それまではスイミングスクールに通ったり、剣道クラブに通ったり、活発に遊ぶ子どもでした。それが個室の中で絶対安静で、トイレに行くこともできませんでポータブルトイレをベットのそばに置いて、ただ横になっているそういう生活でした。で、食事制限がはやり厳しくくて、たんぱく質や塩分、カロリー、水分も計算されていました。ですから入院期間は、病院の食事以外は食べませんでした。薬の副作用で強い空腹感を感じてしまいまして、いつも「おなかが空いたぁ~またお腹すいた~」としょっちゅう言っていました。またその薬がとても苦いもので、多いときは10錠くらいも飲んでいまして、見ていてかわいそうに思いました。幸い自宅から病院は自転車で5分くらいの距離でしたが感染症予防のためお友達とかの面会もできませんで、私も夜の付き添いはしませんでしたので寂しかったと思います。

 また3歳違いの兄がいまして、当時十分一人で留守番できる年齢ではありましたがそれでも毎日、夕方から夜にかけて一人きりにさせて、兄にも寂しい思いをさせたなあと思います。

 そんな中ある日ボランティアさんがこいのぼりを作ってお部屋に飾ってくれました。白い壁だけの殺風景な部屋が賑やかになり少し気がまぎれたのを覚えています。1ヶ月が過ぎて個室から出られるようになりますとボランティアさんたちとゲームをしたりお絵かきをして遊んでいただきました。いつもは私が帰る時間になると、「明日早く来てね」とせがまれるんですが、、ボランティアさんの来る日は「お母さん遅くていいよ」と言われるので安心して家のことができました。

 子供が病気になるということはどの親にとっても大変なショックです。親としてみれば何がいけなかったのか、どうしてもっと早く気づいてやれなかったのかと、自分を責める毎日でした。でも意外と子供のほうが病気を自分のこととして受け入れるのが早かったかなと思います。それは、お医者さまが娘にきちんと説明をしてくれたからだと思います。病気の告知について最初は、子どもにそこまで説明するのかと親が迷った面がありました。でも病院は子どもなりの理解が必要だということで「本人にきとんと説明します」と言われました。その日は先生がイラスト入りの資料を作っていただいて、臨床心理士さんも交えまして、しっかり説明していただきました。そのおかげで退院後、学校に復学したとき、食事制限がありますので、給食はみんなと別のものが出たりしますし、体育も二年間くらいはお休みさせました。どうするのかなーと心配でしたが、本人が、「私はこういう病気だから出来ないの」ということをお友達や先生に自分から説明できましたので、よかったなと今では思います。子どもが小さいから分からない、とかあいまいにするのではなく、年齢に応じてきちんと説明していただいたことが、今後娘がこの病気と向き合っていく上ですごくよかったと思います。

娘は入院が長期になるということで、通っていた学校から院内学級に転籍しました。院内学級の先生方も、いろいろな変化に戸惑っていた娘に優しく声をかけていただきま楽しく授業を受けることができました。でもこれは学校の授業なので、お勉強で宿題もあります。その点、この遊びのボランティアさんというのは100%遊びなので、子供たちも毎週土曜日を心待ちにしておりました。

入院中もさることながら、退院後も大変お世話になっております。入院中にできたお友達と通院の帰りにボランティアさんの事務所に寄っておしゃべりをしたり、さきほどありました夏休みには昨年と今年は伊豆高原ホテルにご招待していただきました。親だけでなく兄弟までは無料でいいですよと言われて今年は6、7家族がボランティアさん達と一緒に出かけました。病院以外の場所でお友達と一緒に寝泊まりし、時間を気にせず遊べるとあって子供達はほんとに大喜び!ボランティアさんたちを巻き込んで夜11時、12時まで遊んでいました。また夏休みは自由研究として油絵を描くという企画をしていただきました。。そのときは、NPOの事務所にやはり同じくらいの学齢、小学校1年生から6年生までの子どもたちが集まってお昼も一緒にいただいたり、すごく楽しく過ごしました。入院中にできたお友達というのはとても大事な存在ですがそれぞれお家も遠いし、親たちもなかなか会えないんですね。それでNPOがいろんな企画をしてこのような機会を設けていただきとても感謝しています。娘の場合は4カ月もいたんですが同室では白血病のお子さんですとか、なかには幼稚園くらいの小さな年齢のお子さんにも会いました。このような病院でボランティアさんがベッドサイドまで遊んでくださったり、退院後もいろいろな形で遊んでくださったり、友達や社会とつないでくださって、たいへんありがたいと思います。ですけどこのようなNPOは全国的にみてもめずらしく、また行政からの助成がないということで運営状況は厳しいと聞いております。こういった活動に行政が少しでも手を差し伸べていただければ、病気の子供やともに苦しむ親御さんたちの笑顔が増えていくと思います。

娘は退院してから2年が過ぎました。慢性疾患ですので、今後も継続して通院、病状の経過観察、薬もまだ続きます。こういった長期療養の子供たちというのは遊びのボランティアという存在がとても必要だと思います。娘はこのNPOのおかげで「病気になってつらいこともあったけど、あの入院生活があったからこそこんな楽しいご褒美もあるんだ」ということで人生を前向きに歩んで行ってくれたらと思っております。