病気になってもいっぱい遊びたい

私達は、病院で子どもと遊ぶボランティアです。退院してからも出会いの場を大切にしています。

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病室でピアノの発表会 復活祭の前日に

2012年4月7日(土) ガラガラドン14:00~15:30

 

桜満開の美しい土曜日。重い大きなキーボードを引っさげて、ヨイショヨイショ、よろめきながら早稲田の坂道を登ってきたのはボランティアの堀江さん。運んだ先にK子ちゃんが待っていました。K子ちゃんはお兄ちゃんが病気で毎週土曜日、お母さんと一緒に病室にいます。

「一緒にピアノ弾いてみる?」「うん!」土曜日はボランティアとピアノを弾くのがすっかり楽しみになっています。さすが小学3年生、飲み込みがいい。堀江さんは今日、連弾が出来るように大きなキーボードを自宅から持ってきました。駅から病院まで20分の坂道をごくろうさまです。

「今日はおにいちゃんの具合が悪いからボランティアの部屋で練習しようね」

おにいちゃんが元気だったころは、K子ちゃんはママとボランティアも一緒に遊んでいました。トランプやウノなどして病室からいつもにぎやかな笑い声が聞こえました。今年になっておにいちゃんの病状が悪化し、遊べる状態ではなくなりました。ボランティアはしばらく病室に入っていません。この間、ママはどれだけ眠れない、緊張の時間を過ごされたことでしょう…病室の前を通るとひっそりしていました。

そんなとき、きょうだいのためにピアノを教えるボランティアが登場。今日で3回目のレッスン。

「これからピアノを弾きます。4曲弾きます。聞いてください」堀江さんとK子ちゃんがおにいちゃんのそばにキーボードを置いて弾き始めました。「メリーさんの羊」が終わると、「ちょっと待って」とママ。ビデオを出して撮影を始めました。「ネコふんじゃった」「とととの歌」アンジェラアキさんの「手紙」に大きな拍手。パパは「娘がこんなまじめな顔をしているのを初めてみた」とにこにこ。祖父母の暖かい目がK子ちゃんに注がれました。

実はK子ちゃん、それまでピアノ歴ゼロ。わずかな時間に上達したのは、音大出の森さんとピアノ教師の堀江さん、二人のピアノプロが交代に教えたからです。今、お兄ちゃんは呼吸器をつけて、予断をゆるさぬ病状にいます。でも、おにいちゃんも聞いてくれていたと思います。

このような厳しい病室でピアノが弾けたのは元気だった頃からの関係があってのこと。堀江さんとK子ちゃんの連弾は病室の空気をやわらかく、明るくしてくれました。廊下の外では看護師さんたちも聞いて下さいました。

堀江さんはかつて病室で息子さんの看病をしていたお母さんでした。2年前に息子さんが11歳で他界され、その経験から遊びのボランティアに来て下さいました。

翌日4月8日(日)はキリスト教では復活祭。死んだイエスさまが蘇ったお祝いの日。堀江さんはガラガラドンに来るたびに「ママをここに連れてきてくれてありがとう」と息子さんに話しかけているということです。亡くなった息子さんの姿は見えずとも確かによみがえって堀江さんのそばにいるのだと思いました。イースターの前日、病室でのピアノの発表会は聴いているみんなの心に灯をともしてくれました。 ボランティアコーディネーター坂上 

K子ちゃんと連弾をする堀江さん 手前はおにいちゃん

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